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BuzzFeedの運営戦略からWELQ問題を考えてみた【後編】

 

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 前回の記事では、主にBuzzFeedの運営戦略などに焦点を当ててみましたが、今回は、WELQ事件からみるWebメディアの課題を中心に書いてみたいと思います。

 

 SEOだけではなく、Webの信頼性そのものに関わるトピックなので、SEOをテーマに掲げている当ブログからしてみれば、少し脱線した内容であるのですが、ぜひ読んでいただきたいと思います。

SEO対策を施した医療メディア」批判に対する違和感

 昨年12月、DeNAが運営していた医療情報メディア「WELQ」が、医学的に不適切な情報を掲載していたとして、経営陣が謝罪に追い込まれる事態に発展しました。

 この事件は、今も様々な視点から語られています。「IT企業の業務構造の問題」や、「Webメディアの信頼性の問題」といった観点からも多くの記事が書かれています。

 しかし、最近では「医療というものをだしにつかって、金儲けをする事」自体に対する批判も一部から来ています。

 また、「SEO対策をした記事が医療を扱う事」に対する批判さえ出てくるようになりました。

 

 確かに、こうした批判は半分はその通りだといえますが、一方で、既存のメディア環境に照らしあわせば、間違いだともいえます。

メディアは「言論の自由市場」

  通常、メディアは「言論の自由市場」と言われています。コンビニに行くと、明らかに嘘の情報を載せたゴシップ雑誌などが売られています。「メディアは信頼性が第一!」というのなら、こうしたメディアはとっくに規制されているはずです。

 

 しかし、メディアの原理的にいえば、「違う意見はあればある程いい。不必要なメディアはどうせ勝手に淘汰される」となっており、むしろそういった雑誌の存在が肯定されている向きさえあります。

 要するに「表現の自由」にゴシップ雑誌も含まれるというわけです。それ故、明らかに嘘な情報でも、民主主義国家ではある程度、その存在価値が担保されているのです。

WebメディアはTVと雑誌の間?

 しかしながら、この「メディア=言論の自由市場」論は、紙媒体でのみ通用するものです。TVの場合は免許事業であり公共性が強く問われるので、より信頼性が問われます。

 

 フジテレビ系で放送されていた「発掘!あるある大事典」は、2007年に納豆によるダイエット効果のデータを捏造した事で、製作元の関西テレビ社長の謝罪会見後に放送終了に追い込まれました。TVは紙媒体とは違い、信頼できない情報を提供する事は許されないのです。

 

 対して、ネット空間の公共性は、一般的にTVと紙媒体の間だといわれています。Yahoo!ニュースやLineニュースといった大手キュレーションサイトから得る事の出来る情報は信頼性が多少ある一方、信頼性の無いメディアが「市場の原理」で淘汰されにくいという面があります。

 それ故、「ネットの情報は、必要性が高いと同時に、まず疑ってかかる事」が大切になってきます。つまり、ユーザー側のメディア・リテラシーがかなり問われてくるのです。

検索エンジン上位=信頼性の高い情報ではない

 今回のWELQ事件は、ネットサービス大手のDeNAが信頼性の低い情報を発信していた事が主な問題となりました。

 それが問題かといえば勿論そうなのですが、それ以上に、SEO対策が上手くいく事によって、記事が上位検索され、ユーザーは信頼してそれを参照した事自体が問題なのではないかと私は考えています。

 

 「SEO対策を施した医療記事」自体が問題かといえば、私は全くそうは思いません。SEO対策を施した小説や詩があってもいいと思います。

 

kaigaiseo.hatenablog.com

 

上は、私が以前書いたブログ記事ですが、実際にSEO×小説といったものに挑戦している方は既にいますし、内容の面白さ、信頼性とアクセス数は違う概念ですからね。

 ただ、例えば「医療センター おすすめ」とユーザーが検索した場合、IT企業が発信した記事が街のお医者さんが書いたブログよりも上位検索されたら、ネット記事の方をユーザーが信用してしまう事は大きな問題です。

 

 もし、雑誌が嘘の情報を流しそれが話題になったら、売り上げは落ち、淘汰されます。TVは、監視機能がしっかりしているので、嘘の情報を発信する事自体が難しい状況にあります。

しかしながら、Webの場合は、嘘の情報が淘汰される事も、発信し辛い事もありません。「発信元が大企業だから問題だ」という事ではなく、『ネット空間自体が、嘘の情報が存在し、かつ存在し続ける環境である』事、つまり、NHKなどに比べれば、理論上ネットの情報は全て信頼性に欠けるという事をユーザーが肝に銘じておかなくてはなりません。

「政治×Webメディア」からみるテーマ選びの大切さ

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 Webメディアを企業が立ち上げる最大の目的は、殆どが「集客」で、信頼性の高い情報を提供する事ではありません。NHKは受信料を徴収する事で収益を確保していますが、これは信頼できる情報は受容者とのギブアンドテイクでやっと成立するという事も示しています。

 

 それに対しBuzzFeedは、敢えてネットの嘘くささを利用して信頼性がグレーな記事を提供する事でファンを獲得しました。ドナルド・トランプに「Fake News」と名指しで批判されたりもしましたが、そもそも「正確な情報を提供する事」を意識しているわけではないのです。その為のCVであり、拡散重視ですからね。

Webメディアの収益構造と信頼性は相関性がある

 突然、私事とはなりますが、私の卒論の題材は「若者と政治メディア」でした。その中でSeiZee(しーじー)という京都に本拠地のある政治メディアにインタビューを行いました。

 

 その編集長の方が言うには、やはり「政治をWebメディアで発信する事は難しい」という事でした。

 SeiZeeNPOに帰属して継続してる部分もありますが、そういった後ろ盾のない政治メディアは、やはりライトなユーザーを獲得する為に、内容がポップでキャッチ―になっています(それが悪いとは言いませんが)。

ゴシップ、政治と医療は違うけれど…

 アメリカでは、元ジャーナリストの方が有料で配信している「The Dish」という政治ブログが人気を獲得しています。媒体はWebではありますが、既存メディアで活躍していた方が書いているという事で情報の信頼性を獲得しているわけです。

 

 ただ、The Dishは内容の鋭さ、面白さが受けたのであって、媒体が雑誌でも良かった部分もあるでしょう。前述の若者向け政治メディアもそうですが、ネットは信頼性を高めればアクセスが増加するというわけではないですからね。

 

 これまでの内容をまとめると、BuzzFeedは、SNSで拡散する事を目的としていた為、最悪嘘でも良いような情報を発信しても成立してきた。一方、WELQは需要の高さを見込んでテーマを設定をしたが、信頼を獲得できなかったという事ですね。

 この2つのメディアを比較すると、内容や目的が全く違うにも関わらず、外部、内部のライターを使って、同じ構造で記事が書かれているという問題が浮き彫りになってきます。

 Webメディアの収益構造はだいたい同じなので、運営方法も似通ってくる事は当然ではありますが、信頼性、公共性の違いを題材によって判断していくという事がDeNAには求められたのではないでしょうかと思います。

 それは、これから全てのメディア運営会社やブロガーが考えていかなければならない課題でもありますね。

おわりに

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 SEO初心者といっておきながら、大変えらそうな内容になってしまいました(笑)。実は、こうしたWebメディアは大学で専攻した事や卒論の題材にも通じる部分でもあるので、結構自分の中で書きやすいものでもありました。

 

  私が学んでいたのは、どちらかというTVや新聞といった既存メディアだったり、ファシズム形成におけるマス・コミュニケーションの影響だったり(以下、割愛)… 。要するに、マス・メディア に関するものが主でしたが、Webメディアの発展を機に、情報・報道というものも変わっていくのではないでしょうか。

 

 BuzzFeedWELQを比較していくと、はやり現状としては信頼性の高い情報をWebで発信していく事が難しいように見えますね。

 また、信頼性を担保する為には、専門の医師や既存メディアの記者など、従来の権威に頼らなくてはならないという面もあります。

 

 これから、ネット空間の中で純粋培養されるジャーナリストなどが生まれてくれば、そういった認識も変わるのではないでしょうか。また、Googleアルゴリズム自体も、信頼性を重視する方向に変わっていくのかも知れませんね。